ゲームマーケットの盛況や、カナイセイジ氏の『ラブレター』、菅沼正夫氏の『街コロ』等といった作品の台頭により、今や日本のテーブルトップゲームは世界中から注目を集めています。特にゲームマーケットでしか手に入らない個人制作ゲームへの海外需要が高まっている昨今、改めて海外展開を意識するようになったゲームクリエイターの方は多いのではないでしょうか。
ゲームを海外展開する方法として、Kickstarter 等を通して自分ですべてやってしまう方法と海外ゲーム出版社とライセンス契約する方法が主にありますが(その両方というパターンもあり)、どの道を選ぶにしても成功に必要不可欠となるのは「コミュニティ」の力です。
ここでいうコミュニティとは、クリエイター自身やゲームを応援してくれる人の集まりのことです。コミュニティを構成するのは、家族や友達といった身近な人だったり、Twitter のフォロワーやゲームマーケットでゲームを買ってくれるファンだったりします。
このコミュニティが大きくなればなるほど、クリエイターのブランド力やゲームの認知度が上がり、より多くのファンとつながっていくことができます。このように「ファンがファンを呼ぶ」コミュニティを事前にしっかり育てておくことが、Kickstarter プロジェクトや海外販売の成功に繋がります。
この記事では、世界中のゲーマーとつながり、交流しながらインターナショナルなコミュニティを育てていくための方法を紹介します。
① BoardGameGeek を活用する
海外のゲーマーに自分のゲームをアピールしてファンになってもらうためには、世界中のテーブルトップゲームファンが集まる BoardGameGeek (BGG) の活用が必須です。まずはアカウントを作成して、フォーラムをチェックしてみましょう。
BGG では、常にたくさんのユーザーが新しいゲームを求めてフォーラムを閲覧しています。フォーラムに定期的に投稿し、自作ゲームの情報の発信や海外ゲーマーとの交流を続けていくことが、コミュニティづくりの第一歩となります。
特に Board Game Design という掲示板では、作成中のゲームについてアドバイスやサポートを募ることができるので、BGG をはじめて利用するクリエイターにはおすすめです。具体的な相談をもちかければ建設的なやりとりができますし、必要に応じてグラフィックデザイナー、イラストレーター、翻訳者等、さまざまな協力者を見つけることもできるでしょう。
投稿例文:
- Hi everyone, I’m a board game designer from Japan.(みなさんこんにちは、私は日本のボードゲームデザイナーです。)
- These are the games I’ve made so far.(こちらは私の過去作品です。)
- This is the game I am making now.(これが現在作成中のゲームです。)
- What do you think of this design?(このデザインについてどう思いますか?)
- What color should I use for this card? (このカードはどんな色にすべきだと思いますか?)
- Can someone help me check the English rules and card names? (誰か英語のルールとカード名のチェックをしてくれませんか?)
こうして早い段階からゲームの認知度を上げて海外ファンを増やし、自分だけのコミュニティを育てるための種を蒔いておくことで、いざ Kickstarter キャンペーンのローンチやゲームの海外販売に踏み切ったとき、真っ先に支援・購入してくれるファン層を確保できます。
② ボードゲーム会に参加する
コミュニティを育てる上で、「広く浅く」と「狭く深く」は等しく重要なアプローチです。世界中のゲーマーとやりとりできる BGG が「広く浅い」リーチを持つ一方、よりパーソナルな交流を可能にするボードゲーム会は「狭く深い」つながりを作るきっかけになります。
まずは、オフでもオンラインでもいいのでボードゲーム会に参加してみましょう。海外展開を目指すなら、海外ゲーマー向けボードゲーム会にあたってみるのがおすすめです。
例えば、Japan’s International Gamer Guild (JIGG) は、英語およびバイリンガルメインのボードゲーム会として日本では最古かつ最大のグループで、東京・関西・東海・信州と全国各地で展開しています。こういった会の常連には新しいゲームを求めている人が多いので、ゲームのテストプレイや試遊を依頼すれば喜んで引き受けてくれるでしょう。
自作ゲームを実際に遊んでもらうメリットは大きいです。英語のタイトルやルールの添削はもちろん、デザインやメカニクス等についても海外ゲーマーの視点からフィードバックをもらうことができるので「自分のゲームは海外でウケるのか?」という心配もなくなります。社交的な海外出身ゲーマーが、周りの仲間にゲームを広めてくれたり、英語圏のフォーラムやソーシャルメディアで紹介してくれることもあります。
■テストプレイサポートのご案内■
現在 Kickstarter では、テーブルトップゲームクリエイターを対象にオンラインテストプレイのサポートを行っています。JIGG Tokyo の主催者のひとりであり、Kickstarter テーブルトップゲーム部門のアンバサダーとして活躍してくれている Missmerc が、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア出身のゲーマーを集めてテストプレイ会の開催をサポートします。
海外向けテストプレイにご興味のある方は、こちらのフォームからお問い合わせください。
③ メーリングリストを作成する
テーブルトップゲームを個人制作するクリエイターにとって、メーリングリストの作成は非常に重要です。不特定多数に向けたツイートよりも、クリエイターやゲームに強く興味を持って応援してくれている50人が購読するメーリングリストのほうが反応をもらえる率が高く効果的です。
メールアドレス登録用の Google フォーム等を作成し(方法はこちら)、ゲームの告知サイトからリンクを張ったり、Twitter などのソーシャルメディアで共有することで登録数を増やしていきましょう。もちろん、普段から付き合いのある相手、ゲームマーケットやボードゲーム会で出会う同好の士にも登録をお願いしましょう。
より多くの人に登録してもらうためには、メーリングリスト購読者限定のコンテンツやアーリーバード(早割)の案内などといった特典を用意するのが有効です。例: Sign up to receive latest news, early bird offers, and exclusive content!
④ Discord を利用する
Discord は、ボードゲーマーも多く利用しており、非常に活発なチャットコミュニティです。テーマごとにサーバーを作成することができ、そのサーバー内にも細かい話題ごとのチャンネルを設置できるので、共通の趣味を持った人が簡単に集まることができます。テキストチャットなら毎日チェックしてメッセージを送信するのに5分もかかりません。
サーバーに参加したら、挨拶と自己紹介をして(前述の BGG 用投稿例文参考)、毎日1文だけでもいいので、質問またはコメントを送信するように心がけましょう。こうしてサーバーに馴染み、他のユーザーにも認知されるようになったら、ローンチ予定の Kickstarter プロジェクトまたは海外リリース予定のゲームの告知をしてみるといいでしょう。
Discord をはじめて利用する方は、まず Missmerc が主催するテストプレイ用サーバーに参加してみましょう。ご興味のある方は Discord サーバー招待希望の旨を こちらの Twitter アカウントにDMにてお送りください。
⑤ Twitter と Facebook 上のつながりを強化する
BGG やボードゲーム会といった専用コミュニティだけでなく、間口が広い Twitter や Facebook でボードゲームクリエイターとしての専用アカウントを通して存在感を高めていくことも大事です。
ボードゲーマーの興味を引くような、ゲームに関する制作秘話や質問を投稿していきましょう。画像や動画を添えて投稿すると目に留まりやすくなるので、ゲームの初期デザインやコンポーネントのクローズアップ写真等、たくさんストックしておくことをおすすめします。
自作ゲームの情報を発信するだけではなく、ボードゲームコミュニティの一員として交流を重ねるのも、存在感を高めていくためには必要です。気になる海外ゲームクリエイターやインフルエンサーを片っ端からフォローして、先方のゲームについて質問したり、積極的に「いいね」を押したりやリツイートしていきましょう。
もし、誰かがフォローしてくれたり「いいね」を押してくれたら、必ずその人をフォローバックするように心がけましょう。ある程度フォロワーが増えてきたら、メーリングリストに登録してもらうよう呼びかけ、周りの友人やゲーマー仲間にも拡散してもらうようお願いして、コミュニティをより大きく育てていきましょう。
総括
海外展開を目指すなら、海外ファンとの交流はどうしても必要です。交流しながらゲームの情報を絶えず発信していくことで、ゲームクリエイターとしてのブランド力が高まり、ファンがファンを呼ぶコミュニティが育っていきます。
英語が苦手という方は DeepL 等の機械翻訳に頼っても構いません。海外ユーザーは日本人にネイティブレベルの英語を求めていませんし、正確な文法よりも勢いや親しみやすさのほうがずっと大事です。
まずは少しずつでも交流をはじめて、自分だけのコミュニティを育てていきましょう!
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テーブルトップゲームに関するコミュニティづくりや Kickstarter プロジェクトの作成等について、ご質問・ご相談がありましたら、こちらの Twitter アカウント からお問い合わせください。